イーグルバス谷島社長、「地域とソトをつなぐ大切な路線バス」

バス業界では革新的なシステムを取り入れ、データを見える化して、最適な運行ダイヤを作りあげたイーグルバス。ただ、イーグルバスの社長である谷島賢(やじま まさる)さんは、こういった路線を作り上げるだけでは限界があると感じたそうだ。

「データを見える化して、ニーズに合っていないところを見つけて、もう一度運行を最適化する。しかし、赤字の路線バスは、それだけではバスの運営コストをまかなえません。だから、新たに需要を創出して人を乗せることを考えなければいけない。そこで、通勤や通学の時間以外のバスが空いている昼間に観光客が入ってくれれば、きっと再生できるだろうと考えました」

「観光客が入ると地域は活性化しますよね。しかし、地域と連携して体制を整えなければ観光客は来てくれません。その地域に魅力がなければいけない。これはバス会社だけではどうにもならないんです。自治体の首長に、地域のためにリーダーシップをもって対策を組んでもらい、そこに私たちもバス会社として協力しました」

埼玉県ときがわ町は、ふたつの村が合併した町。最初は2時間に1本しかバスが走っていなかった。住民からは、バスの運行本数を増やして欲しいという要望があり、 首長からコストをかけずに1時間に1本の運行を要請された。

通常であればバスを増やして輸送量を倍にすれば可能だが、コストをかけないで実現するために「ハブアンドスポーク」という手法をとった。これは町の中心にハブとなるバス停留所を設け、そこにすべてのバス路線を結束させて乗り換えてもらうことで運行を効率化する方法である。例えば、これまで大野地域から武蔵嵐山駅まで往復2時間かかっていたところを、ハブを設置することで1路線の距離が半分になるので、大野地域には往復1時間でバスがやってくるようになる。同様に他地域からの6路線すべてがハブに集まり、15分以内に乗り換えすることで、多方面への移動もスムースにできるようになった。これにより車両を増やさずに1時間に1本の運行を確保する事ができた。

ときがわ町の「せせらぎバスセンター」

「ハブを作るためには、首長の強いリーダーシップが必要です。なぜならハブには条件があって、スムーズに乗り換えが出来るようにバスの到着時間を合わせるためにはハブの設置場所が非常に重要です。すべてのバス路線の真ん中にハブを作れるような広い場所を確保しなければいけません。ときがわ町にはちょうど体育館の駐車場が該当したのですが、管轄である教育委員会は当然いい顔をしません。そこを、首長が町のためにと強く説得することで実現できたんです。そういうリーダーシップを持った首長がいなければ、絶対にできなかったと思います」

もう一つ「ときがわ式デマンド」というオンデマンドバスも取り入れた。ときがわ町には、大型バスが走っていて、朝夕の通勤通学以外乗客はほとんどいない。そこで、大型バスをやめ、小型バスとミニバンに変えて、路線も幹線道路から町道にして、住宅に近いところに路線を引き直した。

朝の通勤通学時間は定時定路線のままで、9時以降になるとオンデマンドになる。このバスは通常バスで入っていけないような奥まったところにサブバス停留所が置いてあって、そこからハブまでをつないでいる。ほかのバス路線に乗り換えてもらうこともできるので、結局バスを活かすことにもつながる仕組みだ。

さらに、このオンデマンドバスは観光客も利用できるようになっている。通常夏休みなどは学生が通学しないので、路線バスの利用が減ってしまうが、ときがわ町にはキャンプ場もあるので、オンデマンドバスを観光客が使うようになったことで、逆に普通の月よりも利用率が上がった。

さらにイーグルバスではその発展系も実現している。

「ときがわ町のハブは15分以内に乗り換えられるという効率性を追求しました。これはいわば第1ステージです。次に東秩父村ではそのハブを人が集まる拠点にしようと考えました。平日の路線バスはガラガラなのですが、土日はハイキングをする観光客で一杯になります。このバス路線を「ハブアンドスポーク」に変え、そのハブを元々あった和紙づくりの体験施設と一緒にして、2年前に道の駅『和紙の里』としてオープンしました。ここではショッピング施設や行政サポート、観光客へのサービススポット、フードコートなどを設けています。バスの乗り換え時間をゆったりと取ることで、『和紙の里』の様々なサービスを利用してもらう。東京からも手ぶらでハイキングに来ることができて、便利な施設も利用することができる、こういったところで新しいお客さまを創出しようと考えました」

和紙の里バスセンター

「年々減っていく住民の通勤通学で路線バスを支えられなくなってくるのは事実です。ただそれを単なる赤字とみなしてしまうのはおかしい。路線バスは社会の必要なインフラです。こうやって新しい仕組みを作って、外から来る人を増やすことで、収益も上がって路線バスを維持することができるし、地域も活性化しますよね。それが本来の改善のあり方だと思っています。地域内だけを走るオンデマンドバスは、その地域内での移動に閉じてしまいます。一方、路線バスは地域とソトをつなぎ、ソト中交流ができる、それが地域にとって大事なことなのではないでしょうか」