埼玉の赤字路線バスを再生! イーグルバス独自の施策に迫る

日本各地で運行される地域の路線バスは利用者の減少による赤字に苦しむところも多い。そんな中、埼玉県川越市に本社を置くイーグルバスは、赤字の路線バスを受け入れ、その後見事に再生させた。はたして、そこにはどのような企業努力があったのだろうか?立役者であるイーグルバスの代表取締役社長の谷島賢(やじま まさる)さんにお話を伺った。

イーグルバス代表取締役社長の谷島賢氏

もともとイーグルバスは観光バスや送迎バスの運行をメインにしていたが、2006年に大手バス会社から赤字の生活路線バスを引き受けることになった。観光バスや送迎バスは基本的に相手があっての契約なので、必ず利益が発生する。ところが生活路線バスは、年間365日、人が乗ろうと乗るまいと、朝から晩まで稼働させなければならない。そのため、乗客の少ない過疎地のバスはコストばかりかかってしまい、なかなか利益を上げられない課題があった。そこで、谷島さんはこれまでにないシステムを導入することを決めたという。

「まず状況を改善するために取り組んだのは『データを取ること』です。赤字路線のバスを引き受けたとき、まずどこに問題があるか原因が分かっていなかった。まずはそれを見える化しましょう、ということですね。たとえば、なぜここに停留所が立っているのか?そんなことも分からなかったわけです」

これまで日本ではバスのデータを取る仕組みが確立していなかったため、イーグルバスでは世界中をリサーチして、センサーやアナライザー、コンピューターを統合して、データを取得する仕組みを自社開発。それによって、停留所ごとの情報データ、GPSによる位置情報、時間情報などに加えて、バスの燃料消費量などもすべて見える化できるようになった。

東秩父村は「和紙の里」をハブとしてバス路線を整備

「元大手バス会社にいた弊社役員が当時このシステムを見て、『40年バス業界に関わってきたが、はじめてバス運営の実態が見えた』と興奮気味に言っていたのが印象的でした。それくらいバス業界ではデータによる現状把握ができていなかったわけです。改善を図るための第一歩は、間違いなくデータをとることです。現状をきちんと把握できていなければ、思いつきで『これがいいんじゃないか』という施策を打っても、決して上手くいきません」

データを見える化してみると、30年前であれば利用者が多くいた路線でも、社会環境の変化の中で、バス停近隣の会社員の利用が減少していたり、バス停周辺の主要施設自体がなくなっていたり、誰も乗らなくなった停留所がそのままになっていることなどが分かった。また、バスの運行が時刻表より遅れていることも判明。そのため、電車との乗り継ぎがうまく行かずに利用者が乗り遅れているケースや、慢性的に遅れている路線では、バスの運転手が遅れを取り戻そうと、休憩時間を犠牲にしていることなどが見つかった。こうしたデータを基に運行スケジュールを最適化し、利用者にとって便利な路線、運転手にも負担をかけないような安全な路線を確立していったところ、そこでまた新たな課題が持ち上がったという。

ときがわ町は「せせらぎバスセンター」をハブとして路線を再編

「便利で安全な路線ができあがって利用者も増えていきました。しかし、運行データによる改善には限界があるということも分かったんです。改善に着手して2~3年目になると、理想的な運行スケジュールはほぼ完成して、もうほとんど改善の余地がなくなるんです。いくら路線を良くしても最終的には利用者の数を増やさないと、収支を改善することはできません。そこで私たちは「需要創出」をしなければいけないと考えました。生活路線バスの空いている時間に観光客を乗せる仕組みづくりや、地域おこしそのものに取り組むことにしたのです」

赤字路線となるとその路線を手放す、あるいは別の輸送手段に代替するという選択肢も考えられるかもしれないが、イーグルバスはそのどちらでもなく、本当の意味での地域活性化の道を選んだ。

和紙の里の全景

「最近気にかかることは、特に過疎地域において『高齢者の通院や買い物ニーズに合わない生活路線バスを廃止して、オンデマンド輸送や乗合タクシーなどに切り替える』という流れがある事です。しかしこの意味は公共交通を放棄して、生活サポートである福祉輸送へ撤退するという意味です。本来公共交通の役割は、地域内だけの移動でなく、外から人が来る、中から外に行けるという地域の内外(うちそと)交流のための社会インフラです。地域は人が往来する事で活性化します。つまりこれを止めるということは、その地域を隔離してしまうことと同じで、まちづくりとは真逆の方向になってしまいます。まずはその地域を活性化して、外から人がたくさん来るようにする、そこで公共交通に乗っていただくことで、地域住民の移動も支えられる。これが本来あるべき姿だと思います」

次回は、イーグルバスが実際に行っている路線バスの仕組みや地域活性化の取り組みついて具体的に紹介する。