Share金沢に学ぶ、多様な人が住む「ごちゃまぜ」空間の仕掛け

近年、「コミュニティ」というワードがもてはやされるようになり、コミュニティマネージャーと呼ばれる職種や、それを育成する学校も誕生するようになってきた。時代の変化とともに、人と人とのつながりや、人が集う空間のあり方が見直されつつあるのかも知れない。そんな新たなコミュニティづくりを、時代に先駆けて5年も前から取り組んでいる街があるという。「かつての良き地域コミュニティを再生させる」というその場所は、一体どのような街なのだろうか。

金沢駅から車で約20分。近江町市場を抜け、川沿いをまっすぐ走り、さらに先へと進んだところにあるのが、「Share金沢」だ。「人が直につながり、支え合い、共に暮らす街」をコンセプトに、社会福祉法人佛子園によって2014年に設立。今では約80名の入居者がおり、北は北海道から、南は沖縄まで、全国各地から居住希望者が来るというから驚きだ。

「Share金沢」の広々とした敷地内

中を案内してもらうと、サービス付き高齢者向け住宅や、児童用施設、アトリエ付き学生向け住宅など、さまざまな施設が設けられている。さらには、レストラン、クリーニング店、会議室なども敷地内に用意されており、子供から高齢者まで、世代や障害の有無を超えて、誰でも「暮らす」ことができるようになっているのだ。

そんな多様な施設があるだけでも驚きだが、Share金沢を“コミュニティ”とさせているゆえんは、その仕組みにある。例えば、敷地内にある温泉には、入口に一人ひとりの名札がかけられており、入場時に自分の名札を裏返す決まりになっている。これは、高齢者の安否を確認する手助けになるだけでなく、来場者が「住民として受け入れられている」という安心感を得ることにもつながっている。

温泉入口の名札で来場者が一目でわかる

また、学生は家賃を安く抑えて暮らせる代わりに、月30時間のボランティア活動を求められている。内容は、街のイベント運営から、レストランのスタッフ、施設の掃除まで様々。お金を払ってサービスを享受する「受け手」ではなく、一緒にこの街をつくりあげる「主体者」になってもらうために、このような制度にしているようだ。

豊富な施設と斬新な仕組み。他にはないこの「ごちゃまぜ」の空間は魅力的に映るが、実際に住むことを考えたときに気になるのは、プライバシーの問題だ。多様な価値観を持つ人々がともに暮らす中で、果たして住民同士の問題は起きないのか。思い切って職員の方に疑問をぶつけてみると、こんな答えが返ってきた。

「場づくりにはとても気を配っています。住民同士の関わり合いを深めるために、季節ごとにイベントを企画はしますが、それはあくまできっかけの提供。参加するかどうか、参加する際にどう関わるかは、本人の意思に委ねています。望む関わり方は、一人ひとりによって違いますからね。」

施設内で企画・開催されたクリスマスパーティーの様子

住居についても、共有空間とプライベート空間に分かれており、施錠もできるようになっている。高齢者住宅と学生住宅は絶妙な距離感で建設されており、行こうと思えばすぐに行けるが、すぐ隣に暮らすわけではない。生活リズムが異なる人々が、心地よく暮らせるように配慮されているのだ。

住居間には木々や小道が配置され、絶妙な距離感が保たれている

ただ施設を構えて終わりではなく、無理に住民を巻き込むわけでもない。誰でも住める「ごちゃまぜ」空間は、考え抜かれた仕組みと、そこから生まれる秩序のもと、成り立っていた。