十日町で出会った「まだ見ぬ暮らし」

「おてつたび」の紹介の最終回。十日町の古民家ゲストハウス「やまねこ」雪かきのお手伝いに挑戦した後、「やまねこ」のオーナー山本さんに十日町の観光スポットをご案内頂くことに。

清津峡を後にして向かったのは松之山温泉。日本三大薬湯の有馬温泉・草津温泉と並んで有名な薬湯温泉だ。松之山温泉の湯は1200万年前の化石海水だと考えられており、地下に閉じ込められた海水が地圧によって地上に一気に吹き出している「ジオプレッシャー型温泉」という非常に珍しい温泉なのだ。驚くべきはその温度で源泉はなんと約90度!

日帰り入浴ができるという「鷹の湯」さんに連れてきてもらい、寒さで冷えた体を温めようと足早に浴室へと向かった。

日本三大薬湯「松之山温泉」を楽しめる

ガラガラガラッ。白い蒸気で満ちた浴室で体を洗い、浴槽へと足をつける。

「ア、アッツーーー!」

熱いお湯は好きな私だが、冷えた体で入ったことも相まってものすごく熱い。ウーっと声にならない声を漏らしながら、ゆっくりと肩まで浸かる。「ハア、暑いけど最高に気持ちいい」と思ったのも束の間、今度はなんとも言えない薬のような匂いが漂っている。どうやらこの匂いが、日本三大薬湯にもなった理由なのだろう。そして山本さんが言った。

「しかもここのお湯、しょっぱいんですよ。」

そう言われたら味見したくなってしまう私。口の周りについたお湯をペロリと舐めてみた。

「わぁ〜、しょっぱい!」

はるか昔に海だったこの場所を、今こうして温泉として楽しんでいるのだ。なんと地球のロマンを感じることのできる温泉なのだろうか。

脱衣所で発見したオモシロ張り紙

身体の芯まで温まった後は、松之山温泉街を少しだけ散策。小さな川沿いに並ぶ松山温泉街。決して大きいとは言えないが、漂う雰囲気から「ここは賑わっているんだろうな」ということが伝わってくる。

そして坂を上って見えて来たのは、「大地の芸術祭」で設置された、スペイン人作家のサンティアゴ・シエラ氏のアート作品「ブラックシンボル」である。

雪の向こうに現れた「ブラックシンボル(オズボーンの雄牛)」

高さ10mある存在感ある作品が、何の違和感もなく自然に溶け込んでいる姿はまさにこの芸術祭の理念である「人間は自然に内包される」ことを象徴している。

十日町市・津南町には「大地の芸術祭」の期間外であっても、町の中にアートが散りばめられており、それを探しながら町を巡るという楽しみがある。

松之山温泉街の散策を終える頃、周囲はだんだんと暗くなり始め、山本さんの提案で晩御飯を食べに行くことになった。せっかくなので「新潟県のご当地グルメを食べたいです!」とわがままを言わせてもらい、へぎそばを食べに地元のお蕎麦屋さんへ連れて行ってもらった。

へぎそばとは、つなぎに布海苔という海藻を使った蕎麦を、へぎ(片木)と呼ばれる四角い器に載せて提供される蕎麦のこと。蕎麦本来の味が楽しめて、チュルリと平らげてしまった。

海苔を混ぜているためへきそばは緑色がかっている

古民家ゲストハウス「やまねこ」に戻り、山本さんご夫妻、岸上さん、私の4人は、コタツで晩酌。10代の岸上さんだけはお酒が呑めないのでコーヒーを片手に、十日町のことや、岸上さんの勉強していることについて語り合った。

岸上さんが着ているのは丹前という綿の入った半纏。丈が長く暖かい。

とてもほっこり、充実した1日の終わり。まるで家族と過ごすような、ゆったりあたたかな時間。普通の旅ではなかなかできない「その地域の人とつながる体験」は、何にも変えられない価値がある。私の中に「また帰りたい場所」が増え、さらに京都から来ていた岸上さんとの出会いをつなぐため京都に旅するかもしれない。

「おてつたび」を取材させてもらったことで、十日町の「暮らし」を経験し、自然と共に毎日を丁寧に生きることの美しさを改めて再認識したのであった。

あなたも「まだ見ぬ暮らし」を見つけに、「おてつたび」に参加してみてはどうだろう。

■おてつたび https://otetsutabi.com/