山あいの集落に向かい、相乗りサービスを実体験

2018年12月14日から開始された、広島県三次(みよし)市川西地区の移動サービス実証実験。交通機関が充実していない中山間地域で定期便による相乗りサービスを提供することで、移動手段だけではなく地域住民同士が助け合うことのできるコミュニティを作り上げるのが目的だ。では、実際にどのように運用されているのだろう。地域住民の方と一緒にこの移動サービスを体験することにした。

移動サービス実証実験用に用意されたマツダ「CX-5」
公募で「いつわ号」と名付けられた

移動サービス実証実験の対象者は広島県三次市の川西地区の住民とその親族で、申請書を川西自治連合会に出して利用登録をすれば誰でも利用することができる。 利用日の前日の午後3時までに電話かスマートフォンのアプリから予約をすると指定の時間に自宅まで迎えが来て、川西地区の主要な施設まで送り届けてもらえるというシステムだ。

現在のところはルートが決まっており、月、水、金に「自宅」-「郷の駅(地域生活拠点)」-「郵便局」-「自治会館」-「診療所」を往復する定期便が午前と午後に運行されている。川西は5つの町から成り立っており、月曜は海渡・石原、水曜は上田、金曜は有原・三若と、一週間に一度はそれぞれの地域で利用することができる。川西にある診療所が開いている月、水、金を中心に運行しているそうだ。

電話予約の場合は、利用する便と人数を電話で伝えると、迎えに来る時刻などを後ほど電話で連絡してもらえる。スマートフォンであれば予約や取り消し、到着前通知など様々な機能が利用できるという。

ドライバーはもちろん川西地区の住方で、現在8名が登録されている。2種免許を取得していれば特に手続きなくドライバーを担当することができるが、2種免許を持っていない人たちは必ず認定を受けた教習所で専用の講習を受けている。

ドライバーはタブレットで運行開始の連絡や自宅や施設への到着連絡などを行うことで、第3者にも運行状況が分かるようになっている。もちろん事前の基本的なレクチャーは受けているが、タブレットなどを使ったことがないドライバーの方も多いそうで、住民の方を含めて「スマホ教室」などを開くことも検討しているという。

タブレットで到着を報告

用意されるクルマはマツダの「CX-5」で、携帯電話の通信網により常時通信を行っており、クルマがどこにいるのか、ルートを外れていないかなど、遠隔から確認できる。マツダは、移動サービス用の車両のほかにも、スマホのアプリケーションを含めたこれらの運行システムも提供している。

常時クルマと回線がつながっているので運行状況が確認できる

今回はいつもの定期便ではなく、特別に設定してもらった便で、川西の自治会館から出発し、利用者のご自宅へ迎えに行って、地域生活拠点の「郷の駅」へ行くというルートを体験した。システム上は好きなルートを設定することもできるが、当面は需要の高い、決まったルートを回る定期便が主体になるという。

早速利用者の方のご自宅に向かうと、その道中でびっくり。クルマ1台通るのがやっと、というような細い道に入り込んだかと思いきや、さらに急な登り坂が続いている。ドライバーさんも「雪が降ると、このCX-5のような4WD車じゃなければ絶対に登れない」と語るほど。たしかにこの道では高齢の方でなくても運転を躊躇する人は多いだろう。坂道を登りきると、開けた場所に出て、棚田や家が見えてきた。こういった場所が川西地区に点在していると聞いて、この移動サービスがきちんと運用されれば、地域の人もさぞうれしいだろうと感じた。

ドライバーは道を知っている地域の住民なので安心

今回移動サービスを利用された女性は、普段は自分でクルマを運転して出かけたりもするが、CX-5のような素敵なクルマに一度乗ってみたいと思い利用したのだという。CX-5に乗って満足そうにされながら「できれば川西だけではなくて、もう少し遠出もしてみたい」と話していた。

一度の利用で4名まで乗車することができる

ドライバーさんはこの地域に長く住まれているので、ナビもまったく使わずにスイスイ運転されていたことが頼もしかった。その後も近所の方をもう1名乗せて、あっという間に郷の駅へと到着。クルマで走れば10分程度の距離だが、高齢者にとっては歩くのは大変だし、坂道は危ないし、買い物をしたときなどはなおさら送り迎えしてもらえるのは有難いだろうと実感。

今回で3回目の運行だというドライバーさん

これからは単なる移動サービスだけではなく、移動しながら体験できるイベントや若い人たちにも利用してもらえるような施策も考えているという。ただし、一番重要なのは地域の人たちの声だという気持ちは変わらない。新しい取り組みも大事だが、まずはこの移動サービスの正しい周知と、現在利用を遠慮している人にも気兼ねなく使ってもらえるような仕組みづくりを構築していきたいという。

川西地区には元から将来のまちづくりのビジョンがあり、そのひとつの手段として今回の移動サービスが持ち上がった。この取り組みが実証実験だけで終わらずに、川西の方々のより良い暮らしにつながるものになればと願うばかりだ。

地域の方たちが思い描く理想の川西地区