古民家再生で地域の魅力を高める兵庫県篠山市

昔ながらの古民家を再生して一つの観光資源とするプロジェクトは、このところ各地で見られるようになってきた。海外観光客の人気を集めているところも多く、昔からの風景を残しつつも観光地化するということは、その土地に住む人たちにとっても受け入れやすいプロジェクトだろう。一方で、まだ開発が始まったばかりの地域では知名度が低かったり、古民家のある場所へ行くための交通手段が整っていないところも多い。今回は、近年その取り組みを拡大している兵庫県篠山市を中心に古民家再生プロジェクトの実態を見てきた。

篠山市の古民家の特徴は、メインの屋根のほかにひさしのような小屋根があり、格子窓が設けられている点

兵庫県篠山市は、旧丹波国として京都への交通の要として栄えた街で、宿場町も多く、街道沿いに商家がずらりと立ち並ぶなど、今でも歴史を感じる街並みが続いている。そして、2019年には市名が「丹波篠山市」に変更される予定となっている。

丹波篠山では、売りに出されている町屋などをボランティアと市民ファンドで救おうという古民家再生プロジェクトが行われている。老朽化している町家や民家を市民ファンドで買い取り、プロの専門家の指導のもと、ボランティアによって改修。

その後売却するなどで、ホテルや飲食店、ギャラリーなどとして活用してもらう考えだ。こういった市民によるプロジェクトもある一方で、民間企業も積極的に古民家を売りにしたホテルや飲食店に取り組んでいる。その代表例が、篠山市の城下町全体で7棟の古民家を再生しホテル化し、城下町全体をゆるやかなホテルの敷地として見立てて運営している「NIPPONIA」である。

古民家を再生してホテルにした「NIPPONIA」


篠山 城跡の北西部には、ホテルとしてリメイクされたニッポニアの古民家ホテルが2軒集まっているが、それ以外にも再生された町屋が多数あり、雰囲気のあるカフェになっていたりブリキの玩具屋さんになっていたりと、少し歩き回るだけで心がほっこりと暖かくなる。

中でも、築100年以上経過している地元名士の元邸宅を再生してホテルにしたというNIPPONIAのONAE棟は圧巻だった。当時の趣や佇まいを残すため、梁や窓の古いガラスや建具などはそのままに、モダンな改修がされていて快適に過ごせるような空間づくりがされている。食事も丹波篠山で採れた新鮮な野菜や但馬牛を提供するなど、地のものが楽しめる。篠山城跡を取り囲むように配置されたホテルは合計7棟で、グループで宿泊したい人やプライベート空間を大切にしたい人、さらにはペットと一緒に泊まりたい人など、それぞれのニーズにあわせて選べるようになっている。

さらに篠山市の中心部から山間へ向けてクルマを10分ほど走らせると、田んぼや森林などのどかな風景が広がってくる。なんとこの中山間部にも同じように古民家を再生した宿やレストランがあるという。「集落丸山」と呼ばれるこの家々は、築150年以上が経過しているもので、元々空き家となっていた建物を借り受け、有志からの出資や補助金をもとに改修。いまは「日本の暮らし」を体験する宿として、この集落の住民が主体となって運営している。

これからは宿泊だけではなく、農業体験や料理教室、陶芸体験など、さまざまなアクティビティーも行っていく考えだ。現在は2棟の古民家がホテル用に再生されており、それぞれ一軒家を丸々借りて最大で5名まで宿泊できるようになっている。城下町とはまた趣が違い、自然に囲まれた空間でゆったりと過ごすのもまた格別時間になるだろう。

このように古い街並みが残る場所にいるだけで、日常を忘れてこの空間に浸ることができる。ただ、篠山市をひと回りしてみて分かったことは、こういった場所は密集しているわけではなく、それぞれ点在しているということ。それぞれの街並みやお店の雰囲気などはとても素敵だが、まだ一本の輪にはなっていないように思えた。もし、便利な小型モビリティーなどがあって、これらを一つに繋ぐシステムができたとしたら、この取り組みもより生き生きと輝くものになるのではないだろうか。みんなでうごこう!プロジェクトでもこういった活動をサポートする施策をこれから検討していくつもりだ。